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『10代のための人間学』
書籍の紹介:
「国民教育の父」森 信三[もりのぶぞう]
(明治29年~平成4年)
「立志の書」・「自立の書」として中高生に向けて
やさしく説いた書です。生き方の指南書です。
10代の学びが人生の土台をつくります。
早くから人生の態度を確立することの
必要さ・大切さが説かれています。
筆者は冒頭で次のような内容を掲げています。
「人生2度なし。」というメッセージです。
私たちの人生が二度と再び繰り返し得ないもの
だとしたら、できるだけ後悔をしないような
生き方をする必要があります。
常に自分の前途を遠くかつ深く考えながら
一日一日の自分の生活をできるだけ全力的に
充実させて生きていこうと言うことです。
こうした人生を送るには、まず人として
備えておくべきことがあると述べています。
人として備えておくべきこととは何か、
という点についてこれから見ていきます。
筆者はまず、「立腰」(りつよう)の大切さについて述べています。
立腰とは腰骨を立てることです。
- お尻を思い切り後ろに引く。
- それとは逆に、腰骨を思いきり前に突き出す。
- ひざとひざは、男子はこぶし二つ分、女子はひざとひざを開けない。
- 肩の力を抜き、ややアゴを引く。
- 下腹に力を入れる。
という要領で行います。この姿勢、立腰こそ性根の
入った人間になる「秘伝」なのです。いったん決心した
ことは、石にかじりついてでも必ずやり抜くという
エネルギーは、この腰骨を立て通すことによって
初めて十分に発揮できるのです。
人間の体と心とは相即一体のもので、心をシャンと
しようと思えば、まず体をシャンとしなければ
ならないのです。集中力や持続力が出てくるのです。
「腰骨を立て通す」ことによって、
・やる気が起こる。・集中力が出る。
・持続力が付く。・頭脳が冴える。
・行動が俊敏になる。・内臓の働きが良くなる。
次は、「あいさつと返事」の大切さです。
筆者は「人間の軌道」として
次の三か条を挙げています。
- 毎朝、親に対して必ずあいさつをすること。
- 親から呼ばれたら、必ず「はい」と返事をすること。
- 席を立ったら必ず椅子を入れ、はきものを脱いだら必ずそろえる。
以上三か条は教育の立場から申せば「躾の三か条」
でもあります。これらのことは、人間としての
しまりのある人でないとなかなか守れません。
三つ目は、「掃除」についてです。
清掃というのは、日本民族の伝統たる神道の
清め・祓いに通じるものです。
場を清めるだけではなく自分の乱れた心や邪な心を
洗い清める役を果たします。
四つ目は、「友情」についてです。
親友というものはどうして大事なのでしょうか。
真の友人関係とはどのようなものでしょうか。
- 自分の都合を第一にしないでなるべく相手の立場を主として考える。
- 自分の本当のありのままのことが話し合える間柄ということ。
- 気兼ねなく丸裸で付き合えるということ。
真の友人関係とはただウマが合うからとか心の波長が
合うからとかというだけではなく、互いに切磋琢磨
するところがなくてはなりません。
お互いに磨き合い、励まし合うある種の緊張感です。
尚、普通の友人関係とは区別して
「畏友」(いゆう)という独特な友人関係があります。
「畏友」とは、単に親愛の情だけではなく、
一種の尊敬の念をもって交わる関係のことです。
人間関係の中で最も尊いものではないかと思います。
五つ目は、「責任」についてです。
人間形成の「場」として学校の果たす役割は
大きいものです。今、人間を仮に「知・情・意」
という三つの面から考えるとすれば、学校は
「知」的な面が主となり人として必要な基礎知識を
授ける「場」です。さらに、学校は集団的訓練を
受ける「場」でもあります。
人間は個人としての責任者であるだけではなく、
人間集団の一員としての責任者でもあります。
六つ目は、「自律」についてです。
「自分を育てるのは自分以外にない。」という
名言があります。
自分を律するものは自分しかいない。
つまり、自律とは自分自身を自らの力で規制し
制御すると言うことです。
自律はまた自立に通じ、自律なき人間は
自主独立の人間とは言えないのです。
最後は、「誠実」についてです。
「正直」と「誠実」は、非常によく似た徳のように
思われています。「正直」とは、主として言葉に
関わることですが、「誠実」とは言った通りに
行うと言うことです。
以上、人生の土台をつくる上で必要な7か条について
見てきました。情操教育である「人としての教養」を
身に付ける機会が年々少なくなってきています。
今、改めてこうした教育を
見直していく時期に来ていると強く感じます。