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『最強組織の法則』ピーター・センゲ著
(学習するチームをつくり全員の意欲と
能力を引き出す)
日本企業の組織力とチームワークは、
かつて世界で高く評価されてきた。
しかし、現在の複雑で変化の激しい環境下において、
各企業は問い直しを迫られている。
米経営学者ピータ―・センゲが1990年に発表した
『最強組織の法則』は、新たなチームワークのあり方
への指針を示してくれている。
1.センゲは、「これからの組織は、一人の戦略家の
指示に従うのではなく、あらゆるレベルのスタッフの
意欲と学習能力を生かす(術)すべを見出す組織、
すなわち学習する組織(ラーニングオーガニゼーション)
であるべきだ。」と述べている。
そのために必要な5つのポイントを挙げている。
①「システム思考」
自分が直接関わる個別の事象だけではなく、全体の
相互作用を理解し、それを有効に変えていく術(すべ)を
把握させるための知識とツールの総体。
②「自己マスタリー」
マスタリーとは習熟度を指し、個々人が習熟度を
上げるための努力が組織の活力を生み、
ラーニングオーガニゼーションの土台となる、という考え。
③「メンタルモデルの克服」
我々の心の中に固定化されたイメージや概念を客観的に
見直し、その時に良いと判断した内容でも時代や環境の
変化に応じて考え方を変えなければならないという意味。
④「共有ビジョンの構築」
本物のビジョンがあれば、人々は学び、力を発揮する。
そうせよと言われるのではなく、そうしたいと思うから
人は行動する。
⑤「チーム学習」
一人ひとりは優秀でも、組織として優秀かどうかは別の話。
「素晴らしいチームは、はじめから素晴らしかったわけ
ではなく、素晴らしい成果を生む術(すべ)をチームが
学習したのだ。」とセンゲは協調する。
2.現在、社会現象の因果関係は複雑化し、
ビジネスパーソンが意志決定するために必要な
情報量も急増している。
正しい判断をするためには、情報を整理し因果関係を
把握するノウハウが不可欠である。
センゲは「システム思考革命」の必要性を唱え、
これを学習する組織の中核的な考えとしている。
「システム思考」とは、物事の依存関係を確認し、
全体の構造を見出すことである。
センゲは、「木を見て森も見る」ことが必要だと主張し、
ある個別の事象の原因を特定するだけでは
済まないと指摘する。
様々な事象の相互の関係性と全体の中での重要性を理解し、
どの部分に働きかければ最も効果的に問題を解決できるかを
見出すことが重要だと考える。
これを「レバレッジの原則」と定義している。
センゲは、一時的な動きとしての出来事よりも、
プロセスや構造を見ることが必要。」と指摘する。
このように、システム思考は全体を見るための考え方だが、
事象を正しくとらえるために戦略の結果を
フィードバックする仕組みが重要となる。
フィードバックを通じて、現場の最前線で発生する
「遅れ」を正しく把握する。
戦略を実行する場合、フィードバックがタイムリーで
なければ、致命傷になりかねない。
3.上述の通り、戦略を実行するには、ビジョンを共有し
全員でプレーすることが不可欠となる。
共通ビジョンを持った組織のメンバーは、それぞれが
一緒にプレーする術を知っていなければならない。
組織においては、「チーム学習」をマスターすることが
必要である。これにより、組織は複雑な問題に対応したり
革新性や調和を生み出したり、他のチームを育成したり
することが可能になる。
(補足)センゲは、「一人の人間のビジョンを組織に
押し付けてはならない。」と説いている。
最初は一人のアイデアから始まるが、トップダウンで
それを押し付けるのではなく、理解者を増やす努力が
欠かせない。共有ビジョンが普及すれば、それは企業の
根幹をなす強固な価値観になる。