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『青年の大成』
書籍紹介:
著者 安岡 正篤[やすおか まさひろ](明治31年~昭和58年)
陽明学者・思想家・教育者。多くの政治家や財界人の精神的指導者、御意見番として知られている人物。
安岡を師と仰いだ政治家に「吉田 茂」「池田 勇人」などが挙げられる。
現代は、新聞や雑誌でも取り上げられているように、
人間疎外・自己疎外の時代だと言われている。
外物ばかり取り上げて自分というものを省みない。
外へばかり心を向けて内を忘れてしまう。
私たちの現代の生活は、外物の刺激が強すぎて
自己疎外に陥りやすくなっている。
学問・教育の世界でも同じことが言える。
情報が巷に溢れ返り氾濫が起きている。こうした情報を
貪欲に求めることに熱心になる半面、自分を見つめ直す
「自己の内省」、「自己の修錬」がおろそかになっている。
自分の「内に心を向ける」ことの大切さを切に訴えている。
雑食と同じで雑学中心の雑駁な勉強は
私たちの知能・頭脳を破壊してしまう。
雑飲雑食・暴飲暴食をすると胃酸過多になるように
雑学雑書は脳酸過多、脳潰瘍を引き起こしかねない。
我々はまず、自分自身を顧みることから始めなければならない。
そして、私たちが身に付けたことを内省し知性に昇華させ、
自分自身を造ることに主眼を置くことが大切である。
「情緒・気概の大切さ」についても述べている。
一般に、知性・知能こそが人間の最大の能力と思いがちだが、
情緒や気概が発達することで知性はやがて智慧に成長する。
偉大な行動力はこの智慧から生まれる。
wisdomというものは、情緒と結び付いているもので
情緒の発達なくしては智慧や偉大な行動は生まれない。
では、いつの頃からこうした教育が必要なのであろうか。
安岡は、幼少年期が適切な時期と述べている。
この時期に生まれ持った純真・豊富な能力は非常な力で発育する。
少年時代ほど、あるいは幼年時代ほど発達する。
脳の重量は、少年の時は体に比して高率である。
大体6%、大人は2%強です。
全血液の40%が少年時代の脳に注がれている。
大人になると半分の20%と言われている。
生体機能的に幼少期からの教育は効果が得られやすい。
さらに、「徳」について述べている。
子どもは5歳から6歳になると、「徳」を含む性格が形成される。「明るさ・清さ・朗らかさ・素直さ・直心・忍耐」
というものである。
人間たることにおいて大切な、これを無くしたら
人間ではなくなる「徳」「徳性」の発育・発達である。
この「徳性」に、前述の知性・情緒が相まって
情操の発育が見られるようになる。
幼少年期にこうした「心の礎」をしっかり作った上で
青年期を迎えるように なって欲しいと、安岡は切に述べている。
そして青年期に至っては「自ら志を立て行動」して欲しい。
「青年よ、大志を抱け」、Boys be ambitious!である。
もっと立派な人間になるという奮発心を起こし、行動することである。
書物を通じてのさまざまな精神的体験、私淑する人物を持って自分の心に理想の情熱を喚起するなど、自己陶冶に邁進して欲しい。
自己を練成し自分がいるその場を照らす「一隅を照らす」人間になる。
そして、同じように自己を練成する者同士が協力し合い隅々を照らす「萬燈遍照」になって欲しい。日本がよりよい環境になるよう努めてほしい。
安岡はこうしたメッセージを若者に発信し続けたのである。