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先日15日は終戦記念日でしたので、今回はこちらをご紹介します。

 

『永遠平和のために』(イマヌエル・カント)

 

著者:イマヌエル・カント(1724年~1804年)

   プロイセン王国(ドイツの哲学者)『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の

   三批判書を発表。フィヒテ・シェリングそしてヘーゲルへと続くドイツ観念論哲学の祖。

 

カントは、自然学・哲学・倫理学だけではなく、社会や政治にも大きな関心を持っていた。『永遠平和のために』は、その分野の代表作である。

この本は、「永遠に平和な世界を築くために、私たちは何を考え、何をなすべきなのか」について、哲学者の立場から論じられている。

カントが、戦争や平和についての著書を書こうと思い立った理由には、

当時のヨーロッパの時代背景が深く関係している。

1つは、絶対王政期で多くの国が王権を巡る争いや植民地の獲得競争に明け暮れていたこと。

2つ目は、フランスとプロイセンとの間で交わされた「バーゼル平和条約」。

平和条約が締結されたが、戦争を永久に終わらせるのではなく、秘密事項を多く含む単なる停戦条約であった。

「永遠平和」のためではなかったのである。

 

 では、カントの考える「永遠平和を実現するための条件」とはどのようなものであるか。この点について、これから見ていく。

 

国家間に永遠の平和をもたらす六項の予備条項—–

 

一.「戦争原因の排除」

  一時しのぎの付け焼刃的な平和条約を批判し、将来の戦争の要因となるものをすべて排除。

二.「国家を物件にすることの禁止」

  国家は人間の集まりである道徳的な人格として存在しているのであって、誰かの所有物であってはならない。

三.「常備軍の廃止」

  軍を持つと、周辺国を絶えず戦争の脅威にさらすことになる。

  お互い他国よりも優位に立とうとする意志が生まれ、限りない軍備拡張競争が始まりかねない。

四.「軍事国債の廃止」

  国債を発行することで軍事資金を集めようとする動きが出るため。

五.「内政干渉の禁止」

  いかなる国も他国の体制や統治に暴力を持って干渉してはならない。

六.「卑劣な敵対行為の禁止」

  暗殺者や毒殺者を使って敵国の指導者を殺したり、一度結んだ幸福条約を破棄したりすることを禁止。

  このようなことをしたら、国の信頼は得られなくなる。

 

しかし、カントは上記のように道徳的でありさえすれば、永遠平和を実現できると考えていたわけではない。

「王制を廃止し、国民主権の国家をつくることこそが人類を永遠平和へと導く。」と考えていたのである。

(補説)国民主権国家を維持するためには、社会契約という法秩序のもとで

   お互い関わり合うことが求められる。これが国家(政府)である。

      ↑     ↑         ↑

   法秩序が存在しない自然状態では、人間は常に自分の利益だけを

考えて行動する。それゆえ放っておくと戦争状態へと向かい、生存さえ危うくなってしまう。

 

さらに、カントはこうした秩序を一国内から国と国つまり、国家間にまで広げていこうと考えた。

カントが目指していたのは、「なぜ、戦争が起こるか」といった戦争の原因を分析することではなく、「どうすれば戦争が起きなくなるのか。」について、解決策(=「平和実現の確定条項」)を提示することであった。

 

第一条項 どの国の市民的体制も共和的なものであること。

     国民の意志が十分に反映される国家である。

     第二条項で述べる国家間の平和を実現させるためには、

     どの国も共和的であることが条件である。この仕組みを拡大

     したのが「平和連盟」である。

第二条項 国際法は、自由な国家の連合に基礎を置くべき。

     カントは、自由な国家の連合のことを「平和連盟」と呼んだ。

 

(参考)「平和連盟」について、「世界国家」発想と比較して説明する。

    「世界国家」とは、世界の国々を一つの国にまとめるということ。

    この発想は、植民地支配と変わらない。支配する民族と支配される

民族に分割される。結果、特定の強者の文化や価値観が支配するようになり、

それぞれの民族の固有の文化が最終的に失われる。

  

「平和連盟」とは、共和的な体制。次の三つの条件を世界の国々に適用したもの。

第一 各人が社会の成員として、自由であるという原理。

   国家間同士がお互い締めつけ合うことのない、上下関係のない関係。

第二 社会のすべての成員が臣民として、唯一で共同の法に従属するという原則。

第三 各国それぞれ平等な関係、隣接しながらも適度な距離感を持って関わり合っている。

   唯一の法、国際法の理念に従っていく。

つまり、「世界国家」は支配関係で結びついているが、「平和連盟」は統治関係で結びついている。

「世界という共和制」=「各国に上下関係のない平等な関係」

      ↑         ↑

「市民法ならぬ国際法の理念」(=国際契約という法秩序)に従う。

 

カントの「平和連盟」は、後の「国際連盟」や「国際連合」のルーツと

なり、国際平和に大きな影響を与えたのである。

 

(注)但し、国際連盟も国際連合も、非常事態の場合に武力行使が認められ

ることがある。(現在、国際連盟は存在していない。)

カントが「平和連盟」を通して目指していた世界平和とは大きな隔たりがある。