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『養生訓』

 

書籍紹介:作者 貝原益軒(1630年~1714年)儒者・博物学者・本草家

     江戸前期から中期にかけて活躍。

     江戸時代の平均寿命が30歳~40歳と言われるなか、益軒は85歳まで生き活躍した。

 

『養生訓』を開いて、まず奇異に思うことは、健康や体のことを説いている本なのに病名や臓器名がほとんど出てこない。

今日の私たちが健康のことを話題にする時は、必ず糖尿病・心臓病といった病名、そして肝臓とか脳といった臓器名が出てくる。

ところが、『養生訓』にはそうした病名も臓器名も出てこない。

益軒は医学に精通していたから病名・臓器名など医学の知識は十分持っていた。それにも関わらず、病名や臓器名をあげないで健康のことを語っているのは、どうしてであろうか。

それは、益軒が今日とは全く異なる心身感、病気観そして健康感を持っていたからである。これから益軒の健康感について見ていくが、これを理解する上での4つのキーワードをあげておく。

 

4つのキーワード:「気」「自然治癒力」「心の養生」「息=呼吸」。

 

 まず1つ目の「気」について見ていこう。

益軒は、「気」は人間の根本、生の根源で命の主人であると言っている。

人間は「気」で出来ている。健康も病気もこの「気」のあり方による。

養生の道は、「気を調えることであり、調えるには気を和らげ、平(たいらか)にすればよい。」

養生訓の中で一番多く出てくる語句は「気をめぐらす」である。

それだけ「気」へのこだわりが強く、大切さを伝えているのだ。

西洋の医学が目に見えるもの(病気)を相手にするのに対し、益軒は目に見えない「気」に目を向けているのである。

 

 2つ目の「自然治癒力への信頼」について見ていく。

益軒は『大和本草』という日本最初の体系的な薬学書を著した薬学者である。薬学の道を究めていただけに、薬のことを説くにあたって一番留意したことは「みだりに薬を用いるな」ということである。

益軒は「薬を飲まずして自ら癒(いゆ)る病多し」と断言している。

「自ら癒る」という言葉に見られるのは、体の内なる自然への信頼、自然治癒力あるいは自己回復力に対する確固とした信念である。

 

体にもともと備わっている自然の力(勢い)をもっと大切にしようということである。

さらに、「時」の大切さにも触れている。病気にはその病気なりの経過があり、「時」に応じた手当があり、その「時」が来なければ治らない。

(=自然経過による病気治癒)

例えば、「風邪というものは、治療するのではなく経過するもの」であり、

「風邪を上手に経過させることが出来れば難病を治せると言ってよい。」

病気を人の体の「経過」と考えている。

 

 3つ目の「心の養生」について見ていく。

『養生訓』と言えば、体の養生と思いがちだが、益軒は心の養生を優先している。心とは、「喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲」の七情のことを言い、それぞれが「気」にどのような影響を与えるかを説明する。

喜びと楽しみが過ぎると「気が減る」、憂いと悲しみが過ぎると「気がふさがる」、そして怒りと欲は「気を乱す」と。

では、こうした思いを解消するにはどうしたら良いのだろうか。

益軒は、「心をしづかにしてさはがしくせず、ゆるやかにしてせまらず」

「心を平らかにし、気を和らかにし」と、こうした心の在り方を軸にして

過ごすのが良いと述べている。

 

 最後は「息を調え、体を愛しむ」について見ていく。

「生きる」とは「息る」、「生きもの」は「息もの」そして「いのち」は

「息の内」と言われる通り、「呼吸」は養生法においてとても大切である。

「息を調え、体を調え、気を調える」ことで心の状態が良くなり「やる気」が自然と湧いてくる。

では、どのような呼吸方法なのか。この点について見ていく。

益軒が勧める呼吸法とは、「気」を胸に集めないで下腹(丹田)に集めて行う、いわゆる腹式深吸(臍下丹田呼吸)である。

(参考)「背骨で呼吸する」=腹式呼吸を意識的に深く行うこと。

    「踵で呼吸する」 =腹式呼吸がより深くなること。

    こうした呼吸方法は、益軒の呼吸法「真気を丹田におさめあつめ」に通じるものである。

さらに、呼吸法と併せ、勧めているのが「導引」というものである。

「導引」とは、肢体や関節を動かし屈伸させたりすること。

そして、体のすみずみを撫でさすり、温め、鎮めることで、気をめぐらす。

   

「気」「自然治癒力」「心の養生」「呼吸法」という体の内側に意識を向け、

自身の力で自己治癒力を引き出し、健康の維持と管理をすること。

「自分の体は自分で守ると」いう意識が強くなるそういう本である。