おすすめ書籍紹介
- ブログ
『大学』
書籍の紹介:『大学』は儒教入門の書と言われている。
曾参(そうしん)[紀元前505年~紀元前437年頃]とその
弟子が孔子の教えを元に編纂。
『大学』は大人(たいじん)の学と言われる。大人とは、他に良い影響を及ぼす人物のことを言う。こうした人物になるための学問が『大学』である。(注)大人=おとな、成人、リーダーなど広い意味で使われる。
『小学』は修己修身の学であって、自己を向上させることに重点を置いたものである。
大人はこの『小学』を修め、個人として立派であることを前提とし、世のため人のために尽くし、良い影響を与える人物のことを言う。
では、『大学』の内容を詳しく見ていこう。
『大学』の冒頭は次の内容で始まる。
「大学の道は、明徳を明らかにするに在り。民に親しむに在り。至善に止
まるに在り。」このことを「大学の三綱領」という。
これから「大学の三綱領」について説明していく。
「明徳」とは、人間なら誰でも生まれつき備えている素晴らしい素質のことである。(=天から授けられた徳性)
ところが、心は濁りやすいので、「五常」(仁・義・礼・智・信)を通じて心の在り方を正す必要がある。
まず、心のありようを正し、心の働きに少しの邪念も入りこまないようにする。そのためには知性を拡充して判断力を磨くことに努める。さらにそのためには、ものごとの道理を極めるように努める。さらに、ものごとの道理を極めて判断力を磨く。判断力を磨いて、初めて心の働きから邪念を取り除き心のありようを正しくする。(=授けられた徳性を高める。)
(参考)上記のことを、「格物-致知-誠意-正心-修身」(五条目)とも言う。
格物:ものごとの善悪や相互の関係を突き詰める。
致知:道徳的判断が充分に備わる。
誠実:自分の思いが誠実に保たれている。
正心:心が動揺せず落ち着いている。
修身:自分自身を修めること。
(=仁・義・礼・智・信)を備えることと同義。
これを国のリーダーの立場でみると、思考・精神・情操面がしっかりしていて(=修己)、国家を立派に統治する資質を備えた人物と言うことになる。
次に、「民に親しむに在り」について見ていく。
「民に親しむに在り」とは、自分の明徳を明らかにすることが出来るようになったら、自分だけではなく一般の人たちの明徳も明らかにできるようにすることである。縁があって知り合った人達も自分の父母、兄弟姉妹のように心から大切にする。お互い良好な関係が築けるよう工夫していく。
互いに親しみ合うことが出来る環境づくりをし、豊かな生活を過ごせるようにする。
これを国のリーダーの立場で見ると、リーダーと政府を構成する各大臣が一体となり、さらには一般の国民に到るまで一体感が感じられる国づくりとなっている。
(参考)上記のことを、「斉家-治国―平天下」(三条目)と言う。
斉家:家庭が斉っていること。
治国:国を治めること。
平天下:天下を平安にすること。
「大学三綱領」「格物・致知・誠実・正心・修身・斉家・治国・平天下」
↓ ↓
「明徳」 「民に親しむ」
(八条目)
最後に、「至善に止まるに在り」について見ていく。
「至善に止まるに在り」とは、自らの考え行動を、自ら考えられる最も高い基準に合わせること。
上記八条目が最高のかたちで行われ、その最高の状態が維持され続ける
こと。どれか一つでも疎かになってはいけない。
自らの中に「最善で理想的な基準」を保ち、行動し続ける。
これを国のリーダーで見ると、「修己という立場」で自分自身を修養することも、「治人という立場」で仁愛を持って国民に向かい合うことも、すべてが「最善で理想的な基準」に則って行われ、「最善で理想的な状態」に止まっているということになる。